生涯乙女宣言者であるひなぎくの読んだ本をご紹介★
乙女的ではない本もたくさんありますので
乙女ではない方にも楽しんでいただけると思います(•´ω`•)

ブラッドライン/黒沢伊織

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その死は、世界を動かした

平和を願うスーパースターの死。

その射殺体が発見されたのは、長年紛争を続ける2か国の国境

――通称ブラッドラインだった。

 

 

このような帯に惹かれて本を手に取ってみました。

戦争や差別ってどうしてなくならないんだろうと常々思っている私は

平和を願うスーパースターに共感したのです。

 

 

あらすじ

長年紛争を続けるアラルスタン共和国とラザン独立国。

2国の間にある黒い境界線。

それはブラッドラインと呼ばれていた。

 

アラルスタンの言い分は「ラザンが先に争いを仕掛けた」。

ラザンの言い分は「アラルスタンの過激派テロ集団による虐殺がひどく、

一方的な暴力に耐えている」。

話は平行線で力も均衡しているので争いは終わらない。

 

そんなある日、ラザンで油田が発見される。

 

すると石油を手に入れたい下心からアメリカが介入し、

更に複雑で大きな渦となって争いが激化していく。

 

そんな折、世界中の誰もがその名と歌を知る

スーパースターMが紛争地のど真ん中である

ブラッドラインで何者かに射殺される。

 

殺したのはアラルスタンの人間か、ラザンの人間か、

もしくはそのほかの国の人間か。

 

憎しみや陰謀が渦巻くミステリー。

 

 

 

この物語には様々な人物たちが登場します。

 

アメリカ兵に殺されたアラルスタンの少女とその家族、

スーパースターMの元妻、

ラザンの首相とつながるアメリカの大統領、

アラルスタンの過激派テロ団員とそれに捕まるアメリカ兵、

イギリス生まれだが両親の故郷ラザンでTV局員になった女性などなど。

 

彼らは言うまでもなく争いの渦中にある。

 

そんな紛争地帯とは関係のなさそうな人物も登場する。

ロシアの裕福な少女一家とクラスのカースト1位と最下位の女子、

日本の貧しい中年男性と勤務先の工場長、

Mの元妻の古いルームメイトで現在はTVショーの司会者の女性など。

 

彼らについては紛争と関係がないように思えるのですが本当にそうでしょうか。

 

 

 自分に置き換えて考えてみました。

日本のごく平凡な家庭で平穏に過ごしていますが

殺人者との共通点は全くないと言えるのでしょうか。

 

 嫌なことを言われたらイラっとするし、

時には嫌なことを言い返すこともあります。

度合いの違いはありますが、紛争の始まりも同じようなことではないでしょうか。

 

それに私は平和主義者だと思っていましたが本当にそうなのでしょうか。

虐げられる人たちに、安全な場所から同情しているだけなのかも知れません。

 

日本には紛争はありませんが差別はあります。

特に韓国の人に対する差別が多いように感じますので韓国を例に挙げます。

 もちろん韓国だけではなく中国やほかの国の人たちへの差別もあるでしょうし、

ハーフの人たちへの偏見もあるのかも知れませんが、

私の周りではあまり聞くことがないのでリアルに想像することができません。

(嫌な気持ちになる人がいたらごめんなさい…。

ただ身近な差別と聞いて思いつく国が韓国というだけなので他意はないです)

 

同じ人間なのに生まれが違うというだけで差別すること自体理解できないので、

夫が韓国の人だったとしても結婚したと思う。

でもそれは差別を目の当りにしたことがないから言えるのかも知れません。

つまり安地からの同情なのかもしれません。

 

もし近所でひどく差別されている人がいたとしたら。

もし韓国の人と結婚して差別された友人や親せきがいたとしたら。

そういう境遇を良く知った上でも私は韓国の人と結婚できると言えるのでしょうか。

 

この本を読んで、私の中の平和主義とは無知と安全地帯から生まれた

偽物の平和主義ではないのかと思うようになりました。

体を張って矢面に立ってでも平和主義を貫き通すことができるかどうか。

そこまでのことは考えていない、言ってしまえば偽善なのかも知れません。

ショックでした。

 

無知で平和主義になれるのならば、みんなそうなって欲しいと思います。

差別を知らないという良い意味での無知な人がこの先どんどん増えて

韓国の人への差別がなくなっていってほしいです。

もちろんほかの国の人たちへの差別・偏見も。

 

国の政策と個人とは切り離して考えたい派です。

ただ、そうではない人たちもいるので揉めるのでしょうけれども…。

 

身近な差別として思いついた韓国の人のことだって

母や祖母が「昔はこうだった」と話す内容しか私は知りません。

 

学生時代にご両親が韓国の人という子がいましたが

彼女は美人で強くてかっこ良かったです。

中国からの転校生もいましたが中国語・英語・日本語が話せるので

尊敬されていました。

オーストラリアからの留学生は明るくてかわいらしくて人気者でした。

韓国と日本のハーフの子もいましたがかわいくてスタイルも良くてモテモテでした。

 

ひがみなどで意地悪なことを言われている子もいましたが

それは日本人でも同じことです。

このような環境だったので、差別という差別には触れずに過ごしてきました。

 

もしかしたら私の知らないところで差別されて

嫌な思いをしていたのかも知れませんが私には見えていませんでした。

だとしたら私は他人のことには無頓着で鈍感な人間なのかもしれません。

 

でも私のように無知で無頓着で鈍感な人が増えれば

差別は減っていくのかも知れないとも思っています。

差別をなくす努力も必要かも知れませんが、

知る努力をやめることで減るかも知れないとも思います。

やっぱり差別は理不尽で悲しいのでいつかなくなると信じたいのです。

 

嫌なことをされたときにやり返したい気持ちはどうすれば抑えられるのでしょう。

これも無頓着になれたら良いのにって思います。

スルースキルってやつですね。

 

変に正義感や使命感を持ってしまうと変な方向に進んでしまうこともありますので

むしろ無知・無頓着・鈍感が大事なように思えてきました。

 

 

結局。

とてつもなく大きな影響力を持つスーパースターMの死をもってしても

世界は1ミリも変わりませんでした。

周りを変えるのではなくて

自分自身が変わらないことには世界は変わらないのだってことを教えられました。

 

これからは良い意味での無頓着を心がけます。

無頓着でいられる平和に感謝して。

安全地帯からの考えであることを意識して。

 

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