生涯乙女宣言者であるひなぎくの読んだ本をご紹介★
乙女的ではない本もたくさんありますので
乙女ではない方にも楽しんでいただけると思います(•´ω`•)

リアル鬼ごっこ/山田悠介(幻冬舎文庫)

今回は酷評します。
ネタバレもします。

 

【あらすじ】

西暦3000年の日本はわがままな王によって統治されていた。
ある日、王は自分の姓「佐藤」が日本で一番多い名字であることに立腹し、
全員を処刑することを思いつく。
その方法は7日間の鬼ごっこ。

 

【主な登場人物】

佐藤翼—21歳大学生。陸上選手。主人公。

佐藤愛—18歳高校生。翼の妹。両親の離婚後大阪に住む。

佐藤輝彦—翼の父。家庭内暴力を振るい主人公らを虐待。

佐藤益美—翼の母。輝彦の暴力に耐えかねて愛を連れて家を出る。旧姓は鈴木。

佐藤洋—翼の中学時代の親友。大阪に住んでいる。

 


「命を懸けた鬼ごっこ」めちゃくちゃ面白そう!
すごく話題になっていたし映画化もされたし絶対期待!
でも今まで機会がなくて読めていなかった。

 

 

 

この前やっと読んでみた。
びっくりした。

文章雑www

絶対取材してないwww

そうはならんやろwww

とにかくツッコミどころが多すぎた。

 

1:虐待について

「ひどく虐待されていた」「幼少期は心を閉ざしていた」とよく出てくるけど
具体的な描写はない。


「何突っ立ってんだ!水の一杯くらいつげ!(p.50)」
と言われて
「また、酒飲んでるのかよ、この非常事態にまったく呑気なもんだよな」
と軽口を叩けるの変じゃない?
普通の親子やん。

 

(p50父帰宅)
「翼!おい、翼!帰ったぞ!飯の支度をしろ!」
(中略)
「今行くよ!」とだけ声を上げる。こんな生活を十四年間も繰り返してきたのだ。
…普通の親子の範疇じゃない?🤔


そこは帰宅早々
「おい!飯はどうした!!(ドカーンガシャーンパリーン)」
じゃないの?

 

鬼ごっこ中に
「おやじは…何やってんだろう(p.65)」
なんて気に掛けたりもする。


ないないないないwwww

 

虐待なら怯えて口答えはできないだろうし
もっとびくびくして顔色を見ているはず。
それにその人が死なないと自分は辛くて痛くて苦しいんだよ?
憎んで殺したいはずなので心配なんて絶対にしない。


これでは単に酒飲みでたまに手が出る程には粗野だけど本当は子供思い、
みたいな一般的な父親くらいにしか思えない。

一般家庭で育った私でも「え?」なので
本当に虐待を受けている人たちは絶対モヤモヤすると思う。

 

2:葬儀について

その父が死んだ翌日。
業者(多分葬儀屋)にお通夜の準備を頼んだら
いつの間にか葬式の準備が進んでいたり(p.114)、
準備のさなかに新幹線のチケットを買いに行く余裕があったり、
終わってみるとやっぱりお通夜だったり(p.120)。

よくわからん。

 

お通夜の翌日はお葬式なしでそのまま大阪へ。
まさかの遺体置きっぱwww
それともここで出てくる”業者”は喪主不在でも全部やってくれるのかな。

 

3:大阪

大阪に着き新大阪から十三に向かう翼。
この場合どんなルートでも最終的に阪急南方駅から電車に乗る。

「乗り換えてから何分が経っただろうか。駅員の話しでは、
もうじき目的の駅に着くはずだが…?(p124)」
「ようやく聞こえた駅名に翼はひとまず安心した」
と長時間電車に揺られ不安を感じているような描写があるけど…。

南方から十三まで2分で着きますよ?

電車に乗ったらすぐに「次は~十三~十三~」って始めないと間に合わないんよ。

 

どれも少し取材すればわかることなのに。
想像だけで書いたのだろうなぁって雰囲気。
初出の2001年にはすでにインターネットもあったし、
何なら葬儀屋や駅に電話して聞けるレベル。
虐待についても関連書籍を読めばもう少し理解できたはず。

 

鬼ごっこの描写だけはスリルがあったけど、人が道を空けてくれるのは違和感。
面白がって道をふさぐ人とか鬼と一緒になって狩る人とか絶対にいるはずだし、
鬼ごっこの時間外に佐藤狩りする一般人も出るはず。
佐藤さん以外の人々が良くも悪くも無関心すぎる。

 

 

~~~大きなネタバレ始まるよ~~~

 

 

 

ストーリーは父も妹も幼馴染も全員死ぬ。

翼は生き残る。

鬼ごっこ生存者への王からのご褒美
「なんでも願い事をかなえてあげる」
に王の死を望み王を銃殺、
そして翼自身も射殺される。


その後王の弟が王につき、日本から王以外に佐藤姓はいなくなったと締める。

 

いや、王のじいさぁ。
あなたも王の傍若無人さに困り果ててたじゃない。

王を撃った翼に対して
「こやつを撃て!撃ち殺せ!撃ち殺すのじゃ!」とはならんやろ。

百歩譲ってなったとしても、兵全員が銃を捨てて
クーデターの成功を祝うところじゃないの?

救いゼロがバトルロワイヤル以降の今どきのお話っぽいけど
ちょっと無理がある。

 

翼が銃を持っていた理由は納得した。
鬼が鬼ごっこに嫌気がさして翼に銃を託し王を殺すよう促した。
でも翼だけって言うのが不自然。
他にもそういう鬼がいて、生き残る佐藤さんがもう少しいてもおかしくない。


そもそもの話、佐藤さん改名で良いやんとか、国外逃亡すれば良いのにとか
身もふたもないことを考えてしまう。
王の威厳を保ちつつ佐藤姓を処分したいとのことだけど
鬼ごっこで威厳が保てるとは思えない。
いっそ暇を持て余した暴君の戯れ的に始まる方が納得できる。

 

とにかく疑問が多く齟齬が気になり没入できない作品だった。


全く本を読んだことがない人が書いた作文のよう。

…と思っていたら本当にそうで、文を書くどころか読むことも
あまりしなかった人が高校卒業後半年たった頃に書き始めたという。
本が好きだから作家になったわけではなく、
仕事どうしようかなぁ、想像力を使ってみようかなぁで始めたってこと!?


天才じゃん!(掌くるーっ)

 

文章が好きでも作品を完結させるには大変な根気や労力が必要なのに、
初めてでよく書き上げられたものだと心から思う。
取材や準備に消耗して書けなくなるのは本末転倒なので
無取材でも勢いのまま仕上げたことは英断だと言える。
そして自費出版するという行動力。
それを10代でやってのけたということが素晴らしい。

 

読者としては最低なもの読んで時間を無駄にしたという感想以外ないけど、
人間的には尊敬する。
どんなにひどい文章であっても根気・忍耐・行動力などから
自分よりもステージが上であることは確かである。

 


※今回読んだ文庫版は巻末に

「この作品は二〇〇一年一二月文芸社より刊行されたものを大幅に加筆、

訂正したものです。」とあるように、

自費出版本から考えるとかなり改善された模様。

これが40歳の作品だったなら、やばwwwってノリで

そっちも読んじゃいそうだけど、子どもの書いたものだから

そこまで馬鹿にする気には私はなれない(手遅れ感あり)

 

 

 

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