生涯乙女宣言者であるひなぎくの読んだ本をご紹介★
乙女的ではない本もたくさんありますので
乙女ではない方にも楽しんでいただけると思います(•´ω`•)

薬指の標本/小川洋子

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美しい世界に浸りたくて

久しぶりに薬指の標本を手に取りました

 

【あらすじ】

サイダー工場で働いていた女性と

標本室で働く男性のお話

 

女性は工場で働いていた時に

事故で薬指の肉片を失い工場を辞める

 

ある日女性は村から街に出て標本室に行きつき働き始める

 

そこの標本技師の男性とあいまいで淡い関係になり

靴をプレゼントされるのだが…

 

 

 

以前読んだ時には

「透明感のある、湿度を感じさせないガラスのような雰囲気」

という感想を抱いたのだけれど

今回は違う印象を持った

 

男女のささやきには湿度があったし

嫉妬という人間らしさもあった

 

ただ透明感はやっぱりすごい

でもそれはガラスというよりは

白昼夢に近い気がする

 

登場人物はしっかりと存在するし生きている

でも男女のデート場所は今は使われていない浴場だし

標本にしたいと持ち込まれるものは

音楽であったりヤケド跡だったりする

 

何とも現実味のないふわふわとした世界感

 

そして主人公の男女の感情や表情があまりないことも

現実味を薄れさせている要因だと思う

 

ハンギングテラリウムのようにガラスで覆われた生活を

更に絹のヴェールで優しくくるんだような

それを外からそっとのぞき込むような

 

そういう秘めやかでふんわりとしたお話

 

ストーリーも不思議で素敵なのですが

物語全体の雰囲気がとにかく気持ちが良くて好き

 

人の人生の一部を切り取るような見せ方をする

フランス映画との共通点があるように感じる

 

「猫が行方不明」と似たような雰囲気のように思うけれど

この映画を見たのはかなり昔なので、今観るとまた感じ方が違うかも

 

表題の「薬指の標本」はフランスで映画化もされているので

ご興味があれば・・・

しかしフランス人監督でさえもこのふわふわ感は

表現しきれていなかったように思うけれど

こちらも今観ると感じ方が違うかもしれない

 

記憶はサイダーの泡のよう

確かに存在していたのに時間がたつと

シュワシュワと輪郭があいまいになる

 

ちなみにこの本は表題のほかに「六角形の小部屋」も収録されている

 

こちらもふんわりとした内容なのであらすじ紹介は難しいのだけれども・・・

 

プール教室で”ミドリさん”と出会ったことから六角形の部屋を

知ることになって白昼夢のような時間を過ごす

 

・・・としか説明できない私の力不足が悲しい

 

しかし間違いなくこちらもやはり小川洋子さんの雰囲気が

たっぷり味わえる素敵な物語

 

こんなにも不思議な世界を体験できるなんて

小川洋子さんの作品に出会えた私は本当に幸せ 

 

 

 

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