生涯乙女宣言者であるひなぎくの読んだ本をご紹介★
乙女的ではない本もたくさんありますので
乙女ではない方にも楽しんでいただけると思います(•´ω`•)

白い巨塔 上中下/山崎豊子


 

国立大学の医学部第一外科助教授・財前五郎。

華麗なるメスさばきでマスコミでも脚光を浴びる彼は、当然、

次期教授に納まるものと自他ともに認めていた。

しかし現教授の東は、財前の傲慢な性格を嫌悪し、

他大学からの招聘を画策。

産婦人科医院を営み医師会の役員でもある岳父の財力と

OB会の後押しを受けた財前は、あらゆる術策をもって

熾烈な教授選に勝ち抜こうとするが…。

教授選挙に絡む利権をめぐり蠢く人間模様を描いた医療サスペンスの傑作!

 

 

 

その昔、TVドラマが社会現象を巻き起こした

白い巨塔でしたがきっかけがなくて

見たことがなく、内容も知りませんでした。

 

医療の世界に渦巻く陰謀や権力に

もまれながらも成功していく主人公を描いた

痛快譚だと思っていました。

 

全然違いました。

胸がすくどころかこんなに後味の悪い、

しかしリアルな内容だったとは・・・。

 

今回私は上中下巻にまとめられた新潮文庫版を読みました。

 

元々は上中巻の内容で完結していたようですが、

あまりにも容赦のない結末だったために

読者からクレームが出て続編である「新・白い巨塔」を

お書きになったとのこと。

 

「こんな結末・・・!」とショックを受ける気持ちは分かりますが・・・。

私も裏切られるような思いでショックでしたもの。

 

しかしどんな内容であってもそれがその人の作品です。

たかが一読者が何の権利があって

「こうするべきだ!」と

主張できるのでしょうか・・・。

その神経はちょっとわかりません。

 

 

作品自体は1965年に書かれた古い作品ではありますが

2018年の現代においてもちっとも古臭くなく

夢中になって読んでしまいました。

人間模様がリアルで、恐ろしくなりました。

 

 

ここから先はネタバレを含みますので

未読の方はご注意ください。

 

 

 

先にも書いたとおり、主人公が成功していく

お話だと思っていたので、読後の第一印象は驚きでした。

 

主人公・財前の恐ろしく傲慢な性格と

財力と権力を駆使して次の地位を踏みしめていく

卑怯な姿が非常に憎らしいです。

こんなに憎まれる主人公は珍しいですが、

人間の姿としてとてもリアルです。

 

対比して描かれる里見先生は不可解なまでに清廉潔白。

むしろこの人の存在がファンタジーです。

 

 

財前が起こしたある医療事故をきっかけに

裁判が開かれます。

明らかな医療ミスで患者を死亡させているにも関わらず

財前は決して否を認めません。

 

弁護士や裁判官は憲法については詳しいですが

医療については詳しくないのが一般的ですので

患者側は大変に不利です。

更に事実を知る医療関係者には

財前サイドが圧力をかけて口封じをします。

そして強力な弁護団を組んで全力で戦います。

 

そんな中、助教授の椅子を捨ててまで

患者側について弁護に回った里見先生は立派ですが

こんな人本当にいるのかなぁ・・・。

すごくかっこいい。

思わず「惚れてまうやろー!」な人物です。

 

ちなみに財前は伊藤英明さん、

里見先生は(ガラスの仮面のときの)田辺誠一さんで

脳内再生されています。

 

裁判の結果は努力の甲斐なく患者側の敗訴。

研究施設がないような僻地の大学病院へ飛ばされた

里見先生は辞表を出して一旦幕引きになります。

 

この結末に読者からクレームがついて

作者は悩みに悩んだ挙句、続編を書くことになります。

 

普通の小説ならば絶対に患者側のギリギリ勝訴で

終わるところですが、敗訴になる辺りが非常にリアル。

とっても残念でしたが、これが人間か・・・と納得しました。

 

しかし冷血で非常に見える財前ですが

人間らしい感情があるところも描かれております。

 

財前は医療ミスを起こしたことに気づかないまま

ドイツの学会へ飛んでしまいます。

 

 

ベルリンの壁を乗り越えようとして銃撃された人の墓標を見て悲しみ、

また、共産側の東ベルリンにある癌研究施設の技術の高さと

閉鎖的な情報非公開の態度に触れて医療に国境があることについて憤ります。

ダッハウ収容所では罪もなく殺された命に思いを馳せて心を痛めます。

(現在ではダッハウ収容所でアウシュビッツのような大量虐殺はなかったという見解ですが

当時は大量虐殺があったと考えらえていた)

 

人の死に対して傷める心のあることが意外でした。

死が日常化して平気なのだと思っていました。

財前は一般的な物語に出てくるような冷血感ではないのです。

 

しかし自分に降りかかってきた死については

容赦なく払い落して踏みつけていきます。

 

ここはやはり小説ですので誇張されて

「気持ちがいいほどのクズ」という感じに描かれていますが

人間の本質ってそんなものかもしれません。

 

自分から遠い死については誰しも無責任に悲しむことができます。

もし自分がナチスの兵士であったなら

恐らく命惜しさに虐殺へ加担するでしょう。

しかし自分の大切な人たちだけは助けたいと思うでしょう。

 

もし家族がお金に困っていたら何十万円と出してあげられますが

飢餓に苦しむ人たちには1万円を出すことすら躊躇してしまいます。

 

人間は自分との距離によって

自分の身を切る量を測ってしまうのではないでしょうか。

 

その範囲については千差万別で、自分だけが大事な人もいれば

自分と全く関係のない人のために努力することができる人もいます。

途上国で無償で働く人々のニュースなどを見かけると、

立派であると心から尊敬し感動しますが、私には真似できません。

 

財前のドイツでのエピソードから、作者の山崎豊子さんは

本当にリアルな人間を描く人だなぁと感じました。

こんな風に描ける人がいるなんて・・・。

まだまだ読んでいない本がたくさんあるのだなぁと痛感します。

 

続・白い巨塔に当たる下巻では控訴し、

患者側の弁護士が義憤に燃え

半分意地になって医療について学び勝訴します。

 

この弁護士の存在も里見先生と同じく

ファンタジーだと思っています。

本当にこんな弁護士さんっていらっしゃるのでしょうか。

 

お金儲けできないどころか生活にも困りそう・・・。

 

真面目で正義感から働く人が生活に窮して

ずるく立ち回る人がどんどんお金持ちになるのは

とっても変な社会だと改めて思いました。

 

企業の中でもそうですよね。

口先がうまく要領の良い人がどんどん出世していきます。

理不尽ですがこれが今の日本の現実です。

 

どうすればこれを変えることができるのでしょうか。

優しい人たちがもっと活躍できるように

支援する方法はないのでしょうか。

今は募金という方法しかありませんが

もっと根本的に変える方法はないのでしょうか。

 

何もできない自分が悲しくなります。

 

 

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